尾崎英子『きみの鐘が鳴る』を読んだ感想

中学受験
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こひめ
こひめ

中学受験を題材にした小説は色々と出版されていますが、
そのどれもが、親からみた気持ち
メインに書かれていることが多いです。

この本は親の気持ちではなく、
中学受験生本人の気持ちが書かれています。

親では気づけない気持ち、
親にはわからない気持ち、
経験したはずだけどもう忘れてしまった気持ち、
そんな気持ちが、色々な家庭で育つそれぞれの子の
立場から丁寧に書かれています。

・中学受験を考えている方
・中学受験生
・中学受験生の親

にオススメです。

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あらすじ 2022年11月9日発売

中学受験に挑む6年生たち。 かけた時間や熱量は、必ずきみを強くする   

*  *  *  *

チアダンス部の活動に憧れて、青明女子中学校を目指しているつむぎ。
同じ体操クラブに入っていて塾も同じのクラスメイトとうまくいかなくなり、
5年生の終わりに転塾することに。

新しい塾「エイト学舎」には、いろいろな子がいた 。

父親に厳しく管理指導される涼真。
マイペースで得意不得意が凸凹している唯奈。
受験に失敗した姉とずっと比べられている伽凛。
受験をする事情や環境、性格、目指す学校もそれぞれ違う4人。

迎えた2月、待ち受けているものは──?

受験の合否にかかわらず、すべての子どもに、
祝福の鐘は鳴る。

未来が開け、さわやかな温かさに包まれる物語。

著者

尾崎英子

1978年、大阪府生まれ。早稲田大学教育学部国語国文学科卒。

2013年『小さいおじさん』(文庫化時に『私たちの願いは、いつも。』に改題)で
第15回ボイルドエッグズ新人賞を受賞しデビュー。

他の著書に『ホテルメドゥーサ』『有村家のその日まで』
『竜になれ、馬になれ』『たこせんと蜻蛉玉』などがある。

近年、息子の中学受験を経験。本書の執筆に至る。

読んだ感想

中学受験をテーマにした本は今までに何冊も読んでいますが、
この本は今までの本とは違い、
「子ども」を中心にお話が展開されます。

今までに読んだ中学受験がテーマの小説


自分も子どもだったはずだけど、忘れてしまっている気持ち。
中学受験を経験していなければ知らない気持ち・・・。

まだうまく自分の気持ちを親に伝えられない子どもの気持ちを
代弁してくれているかのような尾崎さんの文章が
心に刺さります。

小学6年生の2月中学受験まで月日の流れとともに、
それぞれ違う子どもの背景が書かれています。

なかなかない面白い話の進み方です。

第四章 関口唯奈(十一月)

いまはまだ、自分の中のもやもやした気持ちや、ざらざらした思いを、
うまく言葉に当てはめることができない。
だけど、少なくとも自分にたいしては、ごまかすのはやめよう。
笑いたくない時に、笑うふりをするのはやめよう。
自分が、自分の一番の味方になろう。

尾崎英子『きみの鐘が鳴る』より

この子は多分『グレーゾーン』と呼ばれる子どもなのだろうなと想像しました。

『グレーゾーン』・・・発達障がいの特性がいくつか見られるものの、診断基準をすべて
満たしているわけではなく、確定診断ができない状態。

中学受験をしようと考える親子の中には、発達障がいやグレーゾーンの子がいます。

公立では受けることができないであろう配慮や、
高校受験のための内申点をそこまで気にしなくてよい点など、
私立中学に期待をしてしまうところは私もあります。

私たちの住んでいる場所は10年くらい前も学区内の公立中学が荒れていて、
中学受験選択が多くなったようなのですが、

それでもやはり中学受験がメジャーなところではないので、
受験をするのは各クラスで4人くらい(学年で20人弱)ですかね。

学級崩壊目前


今 一ノ姫のクラスは、学級崩壊を起こしつつあります。

授業を妨害する子はいるし、いじめもあります。


一ノ姫もニノ姫も『HSC』という非常に敏感な性格です。
他人の気持ちに共感する力が強く、
今のクラスにいるのが辛いようです。

この章の唯奈ちゃんと同じように、
教室のガヤガヤした大きな声や、
男の人の怒鳴り声はとても苦手で動悸が起きることもあります。

学年が上がるごとに問題が増えてきて、
最高学年になったらたがが外れたようにひどくなりました。

一ノ姫はやっと学校に行かれるようになったのに
またいつ休むことになるかとひやひやしています。

なので我が家は 難関校など偏差値で考えるのではなく、
通学時間や学校の雰囲気などを重視して

姫たちが安心して過ごしやすい学校に
楽しく通ってほしいという気持ちで
中学受験を選択し、今も勉強を頑張っています。



第五章 堀部伽凛(十二月)

「あのね、私の話をすると、いまでも連絡を取っている小学校の同級生は一人もいないのよ」
「そうなの?」伽凛が驚いて訊くと、そうよ、と三井先生は頷いた。

「よく連絡を取っているのは、大学時代や高校時代の友達が多い。社会人になってから知り合って、すごく仲良くなった人もいる。だけど、小学校の時に仲良くしていた子が、いまどこで何をしているのか知らない。あなたたちからすると、意外かもしれないけど、先生みたいな大人って、たくさんいるんだよ。

ただ、勘違いしないで。小学校の時の友達が大事じゃないってことではない。幼馴染といまでも仲良しっていう人もいる。要するに、堀部さんも関口さんも、これからどんどん広い世界に出ていくってこと。

だから、つらい気持ちを押し殺してまで、この小さな保健室から出ていかなくてもいい。みんなのいるところに戻れたらいいに決まっているけど、無理させたくないのよね」

尾崎英子『きみの鐘が鳴る』より

こんな保健室の先生だったら良いのにな・・・とうらやましくなりました。

小学校って本当に社会の縮図だと思います。
合わない子が多いのに、仲良くしなければいけなくて・・・。

「小学校でうまくやれないなら社会でもうまくやれない」
そうなのかもしれません。

私も小学校でうまくやれなかったから、(住所は変わったけれど)
今も近所のママ友とはうまくやれないのかもしれません。

でも大切なのは、「笑顔でいること」だと思うのです。

みんなとうまくやれなくていい。

所詮みんな自分のことしか考えていないから、
自分が元気に笑っていられるなら友達なんて一人もいなくても構わないと
思うのです。

”命を絶ちたい”と思うところまで誰かに追いつめられるくらいなら、
家からでなくてもいい、そう思うのです。

不登校は不登校で大変だし、親はイライラするし、
そこから抜け出すことも

たった一本の線によって、さっきまで見えなかった新しい図形がわかるようになっている。
たぶん、ちょっとしたことなんだ。なかなか気づけないけど、ほんのちょっとしたことで、見えないものが見えてくるんだ。

尾崎英子『きみの鐘が鳴る』より

これは算数の問題について書かれているのですが、
著者の伝えたい思いが伝わります。

勉強の方法はもちろん、人との関係も、
気づけたら色々と見えてくるものってあると思います。

第六章 真下つむぎ(二月)

でも、その頑張りの結果が、明後日、二月一日から出てきます。
それは君たちの成果だ。

望みどおりの成果を出せるように、後悔しないように、
すべての力を出し切ってきてください。

そして、長年この世界にいる私から、一つの予言をさせてもらいましょう。
大人になった君たちの多くが、それまで歩んできた人生を振り返った時に、
たぶんこう思うでしょう。

人生でいちばん勉強したのは、中学受験だったなと。

<中略>

まぎれもなく、この中学受験、君たちの青春です。
子供というのは、大人が想像していないことをやってのける力を秘めているものです。君たちみんなが、子供らしく、大人の予想を超えるようなすばらしい経験を、この中学受験でできるようにと、私とここにいる先生たち、そしてみなさんのご家族が、心から祈っています。どうか大きな気持ちで挑んでほしい」

尾崎英子『きみの鐘が鳴る』より

これは、小説に出てくる子どもたちが通う中学受験塾の塾長が
塾の最終日(中学受験日直前)に話す言葉です。

こんな塾長だったら信頼もできるし、安心して預けられるのになと
思いました。

中学受験はみんなができることではありません。

金銭的な面、交通的な面、家族の協力、本人のやる気等々、
すべてがそろっていないと 本来ならばできないものです。

たまたま恵まれた環境にあるからこそ、目指すことができる。

だからこそ、この生活が当たり前で自分は勝ち組なのだとは
間違っても思ってほしくない。

クラスメイトを馬鹿にするようなことだけはしてほしくない。

それは自分だけで勝ち取ったものではないから。

たまたま恵まれていたからこそもらえた恩恵を
他の人に返せるようになってほしいといつも姫たちには伝えています。

でもなかなかこういう考え方をする人が
いないなぁと悲しくなります。



この本をオススメしたい人

・中学受験を考えている

・現在中学受験に挑戦している小学生

・中学受験生をサポートしている親御さん


に読んでほしいおすすめの一冊です。

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それではまた。
ここまで読んでいただいてありがとうございました。

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